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古風な女 [ショートショート]

まううの怒涛のTDR記事更新を尻目に、わたくし、先日ある企てを実施しました。
実は、先月に掲載した記事(こちら)で、人生初めてのショートショートに挑戦しましたが、
意外と、一部の方々に好評であったことから 一部かい!
ショートショートコンテストなるものにネットで応募させていただいた次第です。

その結果は・・・

[選評]

 非常にわかりやすい、典型的なショートショート作品。
 実在の人物をイメージさせる名前を用いることで、読者の思考をコントロールするというトリックだが、小説としてはちょっと品がないというか、ずるい感じがしてしまうし、ネタの鮮度のことを考えるとおそらく今年度内くらいしか持たない話であるので、その点でもマイナス評価になる。
 文章についてはそこそこ書けていると思うし、とても読みやすくて好感がある。


・・・だそうです。

まっ、結果は見事落選ということだったのですが・・・^^;
それでも予想以上に良い評価をいただきましたね (^^)v

人生七転び八起きと申しまして、こんなことではめげませんよぉ [パンチ]
・・・ということで、人生2回目のショートショートを書き上げました。
立ち直り早過ぎね?^^;

前回よりちょっと長めなものになってしまいましたが、
もし、ご興味あれば、いえ、ご興味なくとも (強制かいっ[exclamation]
ぜひお読みいただければ幸いに存じます m(_ _)m
今日はかなり低姿勢だねぇ・・・

2、3分で読みきれるかと・・・。


<古風な女>

 
 イギリス生まれの私が日本にやってきたのは、1年くらい前のことだった。日本語は得てではなかったが、いろいろなアンティークショップに行くことが唯一の楽しみだった。そう、私は古風な女でもあった。
 彼の名前はマコト。彼と初めて出会ったのは、小さな町のアンティークショップだった。その店に初めて来た私と、その少し後に店に入ってきた彼。軽く目が合っただけだったが、その吸い込まれそうな彼の優しい瞳に、私はあっという間に心を奪われていた。
 アンティークものが好きな彼は、しばしばこの店を訪れていたようだったが、私に初めて出会った瞬間、実は彼も私に一目惚れだったということは、後から知った。その後、私たちが一緒に暮らすようになったのは、ごく自然なことだった。

 マコトの部屋にはアンティークの家具や雑貨がいっぱい溢れていた。私もそれらがとても気に入っていた。マコトは意外とよく話す人だった。マコトの話す日本語のすべてを聞き取ることはできなかったが、私は無口で几帳面な性格だったので、対照的な彼との生活は快適で、幸せそのものだった。
 しかし、私はある頃から体調を崩し、病気がちになっていた。もともと身体は弱かったのだが、週に数回は身体がぐったりし、同時に不整脈を患って(わずらって)いた。
 私の調子が悪いと、マコトは私の背中をやさしく円を描くようにさすってくれた。そうしてもらうと不思議に私の不整脈は治まり、元気を取り戻していた。マコトは医者ではなかったから、病気の治療などはできないはずだった。何をしたのかはよくわからなかったが、いつも私に活力を与えてくれていた。不思議な力をマコトは持っていた。

 ある日、マコトは友人のナオトさんを部屋に招待した。ナオトさんは初めて紹介された私がすごく気になったらしく、マコトが得意げに話すアンティーク家具のことなど上の空のようにみえた。彼らの会話が早口だったこともあり、全てを聞き取ることはできなかったが、「Then, my mind ……」というようなフレーズを良く使っていた。英語ではなかったようだ。さらにナオトさんは、やっぱり性格が一番だ、と褒めくれてたようだった。容姿以上に性格を褒められることに悪い気はしなかった。照れくさかったが、それがとても心地よかった。
 初めて会うナオトさんを前にして緊張したのか、その時も私は発作を起こしてしまった。でも、いつものマコトの施しで、元気をもらっていた。

 その数日後、マコトとの別れは突然やってきた。早朝のことだった。気がつくと、部屋の壁が揺れていた。どうやら、地震のようだった。先に気づいた私がマコトに目をやると、彼も揺れに気づき、起き上がったところだった。マコトは私を見た。その直後、その寝ぼけ眼(まなこ)を見開いて私に向かって突進してきた。
 意外と揺れは小さいと感じていたが、実はその時、壁にかかっていた絵の入った額縁が、私めがけて落ちてくるところだったのだ。避ける間もなく、額の角の部分が私の頭を直撃した。私に向かって手を差し伸べるマコトの姿をうつろに見ながら、私の鼓動は、儚く(はかなく)消えてしまった。永遠に……。



「どうしたんだ?マコト。」
 浮かない顔のマコトにナオトが聞いた。
「打ち所が悪かったんだ。」
「打ち所?」
 ナオトは、マコトの言っている意味が良くわからなかった。
 マコトが続けた。
「前々から、調子が悪そうだったんだけど。」
「ああ、この前の……。」
 ようやく、何の話かナオトには理解できた。
「慌てて手を伸ばしたんだけど、間に合わなくて。」
「えっ?まさか。今朝の地震で?」
 ナオトが驚いて聞き返す。
「ああ。」
「打ち所が悪いって、じゃあ……。」
「全然、ぴくりとも動かないんだ。」
 全てを理解したナオトは、慰めるようにこう言った。
「あんなに正確に動いてて感心したのになあ。まあ、しょうがないさ。また違う古時計見つければいいじゃん。ゼンマイ巻くタイプの。」



                  by まう

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コメント 6

qoo2qoo

こんばんわ☆
自分も実在の人物を想像しながら読んでました^^;
なるほど!です。
落選は残念だけど凄く楽しんで書かれている感じを受けました♪
つい家にある懐中時計を手に取ってしまいました(^ω^;)
※1富良野産メロン人気があるみたいですね♪
実物を食べたことがないので食べてみたいです☆
※2北海道は基本部屋の中が暖かいんですね!知らなかったです。
by qoo2qoo (2008-11-19 23:42) 

いけ麺

時計でしたか!
ホラーかと思って、ほんとにどきどきしました!
でも「性格がいい」時計って、どんな時計でしょう!?(^_^;)
by いけ麺 (2008-11-20 01:13) 

お茶屋

思わず読みいっておりました^^♪
とってもnice!な感じ☆すばらしいです♪
by お茶屋 (2008-11-20 08:17) 

mau

時計でしたか!
オルゴールかと思ってました・・
by mau (2008-11-20 21:55) 

HAL’S DADA

怖い話・・・と思いきやですね。
落選は残念ですが、継続は力なりですよ^^
by HAL’S DADA (2008-11-21 12:44) 

mau-mauu

> 皆様。
コメントありがとうございます [__わーい]
なかなか文章を書くのは難しいものです [__ふらふら]
今回のショートショートは、時計でしたが、
ヒントを入れながら、でもばれないように持っていくのは
なかなか苦労しました。
でも、しっかりばれてましたね・・・(^^;)
アイデアはたくさんあるのですが、文章化がハードル高いです。
またいつの日か書くかもしれません。
そのときはまた暖かく見守って下さいませ [__かわいい]
by mau-mauu (2008-12-07 18:34) 

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